「正信偈」を読む
今年2月からの常例法座では、「正信偈」のお話をします。
「正信偈」は、正式には「正信念仏偈」と言います。親鸞聖人の主著である『顕浄土真実教行証文類』1部6巻に顕わされている内容を限界まで要約し、親鸞聖人のみ教え全体を、7言に要約して顕わしています。
そのため、昔から「正信偈」が分かれば、真宗が分かると言われています。逆に真宗が分かっていないと、「正信偈」は分からないと言われるほど難しいのです。だから1つの言葉でもとても深い内容を持っています。
本願寺のご門主で、有名な大谷探検隊を組織し、中央アジアの仏教遺跡の調査をされた大谷光瑞という方がおられました。お父さんの明如上人が亡くなった時はロンドンに留学中で、急遽帰ってきてご門主に就任されました。ヨーロッパで他の勉強をされており、肝心の仏教の勉強はあまりされていませんでした。
そこで、その当時超一流の学者であった原口針水和上を呼び、「私は親鸞聖人の教えがまだよく分からないから、それを知りたいけれども何を学んだらよいか」と尋ねられました。
すると、原口和上は「それは正信偈を学ばれるのが、一番よろしいですよ」と言われました。
光瑞猊下から「それならあなたが私に講義してくれ」と言われた原口和上は「分かりました。講義をいたしましょう。どれだけ時間がお割けになれますか」とお尋ねになりました。
ご門主に就任するため、忙しい日々が続きます。光瑞猊下は「どのくらいあったら勉強ができるのか」と聞かれました。
「それはどのようにもできます。簡単にと言われましたら5分でお話ができます。でも詳しくと言われましたら、毎日1時間ずつみっちりやって3年間かかります」と答えられました。
それを聞いた光瑞猊下は「それでは5分間でやってくれ」と、ロンドンから持って帰った懐中時計を前に置いて言われました。
原口和上は「それではお話しさせて頂きます」と「正信偈」について初めから終わりまでちょうど5分間で話をされたそうです。
さすがの光瑞猊下も大変驚かれて、「毎日やって3年間は長いから、1年半ほどでやれるような講義をして欲しい」と言われました。
原口和上は「ではそうしましょう」と答えられました。 この場合、話す方も超一流なら、聞く方も超一流、それでもそのくらいかかると言われたのです。
毎日「正信偈」をお勤めの方は、ぜひともお参りして深い意味を味わってください。 お勤めをしてない方も、これをご縁にして「正信偈」に親しんで下さればと思います。